ファイル・フォーマットの言語

参照:http://rosa-menkman.blogspot.com/search/label/Vernacular%20of%20File%20Formats

半年前、ニュージーランドでやったワークショップの五日前、インスピレーションを得ようと、Flichrのグリッチアートのページにログインした。かつてはそのページはとても前進的に思えた。以前にログインした時から何も変わってはいなそうだったのだが、しかし、突如退屈に感じてしまった。そそれら画像は、何の秩序の破壊もしていなく、興味が湧かなく、私にはまったく刺さらかった。輝度・彩度をいじった画像、ブロッキングやアンチエイリアスで崩された画像など、後から思うに、要するに(:退屈しないという意味で)少女か猫のコレクションだったようだ。

全てのグリッチアートが前進的なわけではない。アバンギャルドだったものの大衆化は、避けられなくなってきている。ソフトウェアやプラグインによる、自動的に簡単にグリッチなエフェクトが得られることに気づけ。今にグリッチはファッションになるだろう。

前述のFlichrのページにあったのは、私が目指していたグリッチとは反対の画像達だった。
驚愕やショックを与えてくれる短命なシステムの中の失敗 をグリッチに求め、常識や予想を超えるものをグリッチアートに求めていた。
(Flichrの)作品集は、その代わりによりグリッチの論議からかけ離れたものだった。
私の言うグリッチとは前進的で反逆的な物を指すのだが、それとは別物であるグリッチと、コモディティ化された表面的なグリッチアートとの間で妥協している何かであった。
この諸刃の剣的な今日のグリッチアートは、グリッチの起源に切り込み、我々を最初の定義に連れ戻す。
ホーミ・ハーバーを想い起こさせるグリッチアート。ほぼ同じだが、等しくはない。デジタルのミスの模写。グリッチアートにおける真のグリッチとは、徐々に仮想的な記号に化して消え去っていくのに対し、大衆化されコモディティ化したグリッチは、新しいグリッチのエコノミーの主要な位置を占めていく。私の「グリッチ・スタディ」において、より一層、このコインの裏表には注意すべきだと、考えさせられている。

アートスクールでのワークショップで、私はついに、ファイルフォーマットの性質について教えることにした。ファイルの違いとはすなわち異なる言語、スラング、方言、または特殊な性質、ルールであり、画像を作る際(データベンディングに近い方法)の差異として得られる。

“A Vernacular of File Formats”(ファイルフォーマットの方言)と、ワークショップを名付け、私がこれまで発見してきた作品が基づく、様々な圧縮方法を見せつつ、学生達に彼ら自身のフォーマットでリサーチし最終的に作品が作れるよう、方法を教え、ツールを提供した。

様々なフォーマットを操作するには、異なるOSを使い分けてそのツールを使わなければいけなかったのがとても厄介だったが。この時のPDFは、GLI.TC/H(http://gli.tc/H)で展示したのが最初であり、その後シリーズ化した。その当時も書いたが、これを契機に、かつてクールだったものがホットになってしまう、グリッチの諸刃の剣について意識し始めた。
このように、潜在的なパワーを失った陳腐なエフェクトがわかりやすく説明されるようになり、より多くのアーティストが、単なる物的でデザインに留まったグリッチを超えて、いかにして彼らのアートを展開させていくのかを考え始めるようになることを、私は望む。
PDFをリリース後、10通ほどのe-mailをもらい、異なるファイルフォーマットでのテクニカルな質問をされた。というわけで、サンパウロでのレジデンスに間に、グリッチマニフェストのビデオの制作に取り掛かった。Vernacular of File Formatsの内容も勿論含んでいる。
以前 Swutitsを作った Johan Larsbyと、グリッチスタディやグリッチマニフェストなど、これまでやってきたような講義用と制作用の両方に使えるソフトウェアがないな、ということについて話した。これが「Monglot」の始まりだった。

About Monglot

マングロット(Monglot)とは、マングレル(Mongrel:雑種、混血児)とモノグロット(Monoglot:一言語しか話せない人)を掛け合わせた造語である。ホーミ・バーバーの植民地の”forked tongue”と私のグリッチスピークでのアイデアも参照のこと。

Monglotは、一つの画像にある2つの言語から、グリッチイメージを生成するソフトウェアである。一つは、画像の視覚という言語であり、もう一つはデータの圧縮タイプである。ありとあらゆるグリッチがどのように(擬似的に?)再生され、表面に現れるのかを示す。

Monglotは、ファイルフォーマットベースのグリッチアートにおける、クールとホットの両面性、エンコーディングと画像データという2つの表現を示すことを目的としている。
このソフトで作られたイメージは、皮肉にも、反復性と、このようにクールとホットの間で妥協して存在するグリッチにより、標準化されている。
Monglot はファイルフォーマットとその振る舞いとの間に、どういった違いがあるのかを探り、知ることにも使用できる。

・・略・・他のソフトウェアとの違いについて、Moglotがグリッチアート、グリッチスタディの領域にあることについて言及。

あるグリッチが標準化されるというのは、作り手が圧縮方法について新しい知見を得たということだ。同時に、前進的であったグリッチアートは、仮想的なものになってしまう。Moglotはこのように、戦略的に、正常に失敗を起こさせ、グリッチアートの領域から自身を分岐させてしまう。

Monglot Manual

このソフトは、画像ファイルにランダムの16進数のデータを挿入でき、また別フォーマットのファイルに変換することができる。
ここからダウンロードできる。

MacOS 10.5, 10.6のみで動作。

 

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